第59回人工知能学会 分子生物情報研究会(SIG-MBI, 11月14日(土))

第59回人工知能学会 分子生物情報研究会(SIG-MBI)

[日時] 11月14日(土) 人工知能学会合同研究会 3日目

人工知能学会合同研究会プログラム

[場所]  慶応義塾大学 日吉キャンパス 來往舎 大会議室1

[テーマ] 感覚と知能を持つアメーバ型分子ロボット 新学術領域「分子ロボティクス」アメーバ班と共催

[プログラム]

10:00-12:20 講演セッション1

10:00-10:30  小長谷明彦(東工大) 「アメーバ型分子ロボットの現状と課題について」

新学術領域研究「分子ロボティクス」では、感覚と知能を備えたアメーバ分子ロボティクスプロトタイプの開発を進めている。アメーバ型分子ロボットプロトタイプはリポソームを自己と環境を隔てる境界として持ち、DNAオリガミを用いた「感覚」とDNA計算を用いた「知能」を持ち、微小管を分子モータで動かすことで「運動」を実現する。ここでは、分子ロボティクス研究の背景と今後の展開について述べる。

10:30-11:00 遠藤政幸(京都大学) 「分子ロボットの感覚となるDNAレセプターの構築」

自由に構造設計できるDNAオリガミは構造だけでなく、センサーや分子機械にも応用がなされてきている。我々のグループではDNAオリガミ構造体と脂質二重膜との相互作用を使って規則的な集合体を作成できることを見出している。これらの技術を生かし、リポソームの内外で情報交換するためのDNA構造体「人工レセプター」を作成し、分子ロボットの感覚に応用する。今回は、センサーとなるDNAオリガミ構造体の作成とターゲット分子に対する応答、さらに脂質膜との相互作用について発表する。

11:00-11:30 小宮 健(東工大) 「DNAシグナル生成反応の展開」

ある種の文字列情報とみなせる自身の塩基配列にしたがって,相補な配列を持つ分子と特異的に結合する核酸は,分子反応のプログラミングを可能にする有望な素材である.DNAの配列特異的結合は,情報伝達のみならず,結合にともなうナノメートル・スケールの構造変化を,アクチュエータ機能に利用するシステムの構築に利用することも考えられる.そのようなシステムを実現する上で,シグナルとして作用し得る結合可能な一本鎖状態のDNAを,どのようにして溶液系に供給するかが課題である.本講演では,われわれが開発しているDNAシグナル生成反応について,その特性やシグナルを迅速に増幅する手法を報告する.この反応を活用した今後の分子ロボット実機の創製について議論したい.

11:30-12:00 風山 祐輝,手島哲彦,大崎寿久,竹内昌治,豊田太郎 「マイクロ流体デバイスを用いた均一粒径リポソームの形態変化解析」

細胞サイズのリポソームは,生体膜モデルとして薬剤動態の解析や原始細胞モデル創成の観点から注目されている.リポソームの分散液を直接顕微鏡観察する従来の方法では,分散液中のリポソームが多分散であるために,粒径に依存する現象や刺激応答の履歴を十分な観測数で精確に議論することが困難であった.そこで,粒径選別と並列空間配置を一度の操作で実現可能なマイクロ流体デバイスを開発した.粒径が不揃いなリポソームの分散液から,このデバイスを用いて,変動係数12%未満で均一粒径のリポソームを選別し,かつそれらを60個以上規則正しく並列空間配置することに成功した.さらに,10個以上のリポソームについて,連続的な浸透圧刺激による収縮と再膨張の過程を同時イメージングし,一枚膜に近いリポソームと多重膜リポソームが同様の粒径変化を示すことや,初期の粒径に依存して再膨張過程の応答様式が異なることを見出した.

12:00-12:20  総合討論

12:20-13:20  昼食(各自)

13:20-14:30 合同企画:2014年度優秀賞記念講演(別会場シンポジウムスペース)

15:00-17:30 (17:50) 講演セッション2

15:00-15:30  野村 M. 慎一郎 (東北大) 「人工アメーバプロトタイプ:モータータンパク質を内包したGUVのDNA回路による制御に向けて」

我々は,細胞サイズリポソーム(GUV)内部にてモータータンパク質を働かせ,その挙動をDNA分子回路によって制御することで人工分子アメーバのプロトタイプを構築する研究を行っている.最近,GUV内部への微小管導入効率を向上させ,さらにデザインしたDNA分子デバイスを用いることで,キネシン分子をGUV内壁の脂質二分子膜に導入して微小管分子によるリポソーム変形への道筋をつけた.今後,ATPなどのエネルギー分子および動作制御用のDNA分子をGUV膜を透過させて導入することで,人工分子アメーバの運動制御を実現してゆく.会議では本研究の現状と課題について述べる.

15:30-16:00 角五彰 (北大) 「生体分子モーター集団運動のDNA制御」

生体分子モーターは化学エネルギーを運動エネルギーに変換するアクティブソフトマターで、分子トランスポーターやアクティブプローブとしての応用だけでなく、魚や鳥などの集団運動を実験室レベルで再現するモデル材料としても期待されている。
本講演では生体分子モーターの集団運動をDNAを用いて制御する方法について紹介するとともに今後の展望についても議論したい。

16:00-16:30 平塚祐一 (北陸先端大) 「モータータンパク質による駆動する収縮性ファイバー(人工筋肉)の光描画」

最近我々は遺伝子工学的に改造したモータータンパク質(キネシン)が、カルシウム信号に応じ自己集積的に網目状の微小管のネットワークを形成させることを発見した。また、この微小管ネットワークを特殊な形状の微小チャンバー内で形成させると、長さ数ミリから数cmの収縮性ファイバーを作製できることを見いだした。さらに、光照射によりカルシウム濃度を変化させる試薬 Diazo-2をこの系に利用し、パターン状の光を照射することによりその形状の収縮性ファイバーを作製することができるようになった。本会議では、この収縮性ファーバの特性などを紹介する。

16:30-17:00 安部聡, 上野隆史 (東工大) 「細胞内結晶化を利用したタンパク質固体材料の開発」

タンパク質結晶は、蛋白質分子が規則正しく集積した固体の自己集合体であり、その内部には、機能性分子の固定化を可能とする反応空間が存在する。これま で、我々は、蛋白質結晶の特異な分子空間に着目し、金属イオン、金属錯体、金属微粒子を固定化することにより、タンパク質結晶の機能化を実現してきた。し かしながら、タンパク質の結晶化は、結晶化条件の最適化など熟練した技術が必要であり、簡便にかつ大量に結晶を合成する方法やその機能開拓は十分に達成さ れていない。そこで、本研究では、細胞内で結晶化する多角体タンパク質に着目し、結晶構造をもとにした分子設計により、タンパク質固体材料の開発を試み た。具体的には、1. 多角体結晶の溶解による内包酵素の放出制御と2. 分子界面のアミノ酸欠損によるナノ空間構築について報告する。

17:00-17:30  総合討論

18:00-20:30 アメーバ班会議(非公開、詳細別途)