名大瀧口先生グループの論文が公開されました

Tanaka S, Takiguchi K, Hayashi M,
Repetitive stretching of giant liposomes utilizing the nematic alignment of confined actin,
Communications Physics, 1, Article number: 18, 2018.
DOI: 10.1038/s42005-018-0019-2

発表内容の要点、研究成果の意義
・細胞骨格の1種の微小管と分子モーターのキネシンとの組合わせに、更に様々な工夫を加えることによって、動く分子ロボットの構築に成功した先行研究はあったものの、別のやはり有力な細胞骨格であるアクチン線維を利用した画期的な成功例は、今までなかった。今回、そのアクチン線維の利用によって、変形する細胞サイズの人工脂質膜小胞(巨大リポソーム)の作製に成功した。
「アクチン線維の様な、可変長の繊維状高分子、の応用の有効性」

・生きている細胞の内部と同程度の高い濃度で巨大リポソームに封じ込めると、アクチン線維だけを封じ込めただけで、即ち、分子モーターであるミオシンが無くても、封じ込められたアクチン線維のネマティック液晶化によって、巨大リポソームが球形から紡錘形に変形した。
「分子モーターの不在条件下での成功例、液晶化の様な物理化学的な現象の有用性」

・外液の浸透圧変化によって内部のアクチン線維の濃度を変化させる事や、蛍光標識されたアクチンへの励起光照射によって引き起こされるアクチン線維の切断と、光照射の終了後に起きるアクチン線維の自発的修復を利用する事によって、紡錘形になった巨大リポソームの形態を更に、繰り返し、可逆的に変形させる事に成功した。
「繰り返し運動する分子ロボットの先駆け」

・球形と紡錘形との間を巨大リポソームが繰り返し変形する際、糸状突起の伸長現象、あるいは先体反応が起きた時の突起伸長に良く似た、膜突起の伸長と短縮も観察された。
「生細胞が見せる運動形態変化能との類似性」