【ポイント】
・タンパク質ナノチューブである微小管の「内部」に結合するペプチドの開発に成功した。
・このペプチドを用いることで、微小管の内部に金ナノ粒子を詰めることに成功した。
・様々な分子を微小管に内包することで、微小管の構造・運動制御や生理活性制御への応用が期待される。
【概要】
鳥取大学学術研究院工学系部門の稲葉央助教、松浦和則教授らの研究グループは、北海道大学大学院理学研究院の角五彰准教授、佐田和己教授らの研究グループとの共同研究により、細胞骨格の一種であるタンパク質ナノチューブ状集合体「微小管」の中に、分子を内包する手法の開発に世界で初めて成功しました(図1)。これは、「ちくわ」(微小管)の穴にチーズ(分子)を詰めて「チーズちくわ」を創るようなものです。
本研究では、微小管結合タンパク質の一種であるTauタンパク質 *1のうち、微小管内部に結合すると推定される部位を「微小管結合ペプチド」として設計・合成しました(図2)。4種類のペプチドを合成して微小管への結合を評価したところ、そのうちの1つが微小管内部に結合することが明らかとなりました。さらに、このペプチドを金ナノ粒子に修飾することで、微小管に金ナノ粒子を内包させることに成功しました。本手法を利用することで、様々なナノメートルサイズの分子を微小管に内包させることが可能となり、微小管を用いたナノマテリアルの新たな展開が期待されます。
本研究成果は、文部科学省 科研費 若手研究(B)の支援により得られたもので、2018年8月8日にドイツの国際科学雑誌「Chemistry – A European Journal」オンライン版に掲載されました。
また、日本の研究.comでも紹介されています。