東北大学安部桂太さんの論文が”Molecular Systems Design & Engineering”に掲載されました。
”Programmable reactions and diffusion using DNA for pattern formation in hydrogel medium”
「DNAによる反応拡散系のプログラムとハイドロゲル中のパターン形成」
安部桂太,川又生吹,野村 M. 慎一郎,村田智
Molecular Systems Design & Engineering, 2019, DOI: 10.1039/c9me00004f.
Accepted 25 March 2019
パターン形成とは自律的に規則的な模様が現れる現象であり,自己組織化の重要な要素の一つである.特に分子の反応と拡散によるパターン形成はよく知られており,数理モデルによる形成過程の再現や人工反応拡散系の構築などが報告されている.本研究では合成DNAを用いてハイドロゲル中の反応と拡散の両方をプログラムし,自律的にパターンを形成するシステムについて報告する.合成DNAは塩基配列を設計することで溶液中の反応をプログラムすることができる材料であり,それを組み合わせた論理回路による情報処理が可能である.また,DNAを高分子と結合させ,ハイドロゲル中に導入することで任意のDNAの拡散を抑制することが可能である.ここではこのDNA論理回路と拡散を抑制する機構を組み合わせることで2次元空間をDNAの拡散源を母点としてボロノイ分割するシステムを構築した.また,拡散を抑制したDNAとの可逆的な相互作用を利用してその抑制度を調整することで,母点の重み付けを変更し,得られるパターンを作り分けることが可能であることを示した.DNA論理回路の組み合わせによる反応系のプログラムの高度化や,パターンとゲル化・融解との対応付けにより,複雑なパターン形成やパターンに応じたハイドロゲルの作製が可能になると考えられる.この技術は自律的に構築される人工臓器の開発などに貢献できると期待される.
プログラムした反応拡散系によって形成されるパターン