ニュースレター17号完成しました

分子ロボティクスニュースレター17号(約10MB)が完成いたしました。(小さいサイズのpdfはこちらからDLできます)
第7回領域会議報告、公募研究の特集です。

巻頭言は、文部科学省研究振興局学術調査官・名古屋大学の石川佳治 先生です。

NewsLetter No.17_石川先生

昨年度の8月に学術調査官を拝命し、「分子ロボティクス」を片桐清文調査官(広島大学)と担当しております。任期2年ですので、本領域の研究期間の最後までお付き合いすることになります。私は情報学分野ではただ一人の調査官ということもあり、情報学に関連するいろいろな領域に顔を出し、勉強させていただいております。学術調査官がどういうものであるか、また、学術調査官としてのアドバイス等については、過去のNews Letter において他の調査官の方々からの説明がなされておりますので、今回は情報学の分野の研究者としての立場から、本領域へのメッセージを述べさせていただきます。

領域代表の萩谷先生と直接お話しする機会を得たのは、学術調査官として本領域を担当してからでしたが、よくよく考えますと、大学で情報工学を学びはじめた頃に萩谷先生の「ソフトウェア考現学」[1] を手にして何度も読み返した思い出があり、その後もCommon Lisp や数理論理学の教科書などでもお世話になりました。なお、ちょうどいま名古屋大学では、情報分野の学部・大学院の組織改革を進めているところですが、学部の教育がどうあるべきかについては、萩谷先生がまとめられた「情報学の参照基準」[2] を大いに参考にさせていただきました。
このようなこともあり、萩谷先生がどのようなトピックに興味を持たれているかには継続して関心がありましたが、2001 年に出た「DNA コンピュータ」[3] には、このような研究分野があるのかと強く感銘を受けました。その後、学術調査官として「分子ロボティクス」を担当することとなり、萩谷先生、小長谷先生、村田先生から本領域の研究内容について紹介いただく機会がありましたが、本領域ではロボティクスという切り口でまったく新たな話が展開されており、研究内容だけでなくその先見性についても驚かされました。

「分子ロボティクス」は、複数の研究領域にまたがる未開拓な分野を、代表者を中心に大きなビジョンと熱意をもって切り開いておられるという点で、まさに新学術領域の趣旨に合致した領域であると感じております。研究期間は今年度までとなりますが、今後ますます本研究分野が発展し、重要な学術領域の一つとして定着するものと大いに期待しております。


[1] 萩谷昌己, ソフトウェア考現学―基礎概念への最新おもしろガイド, CQ 出版社, 1985 年
[2] 萩谷昌己, 情報学を定義する―情報学分野の参照基準, 情報処理, 55(7), pp. 734-743, 2014 年
[3] 萩谷昌己, 横森貴, DNA コンピュータ, 培風館, 2001 年