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 | 領域代表の挨拶
 
 
 
        
          1990年代前半DNAコンピュータから始まった分子コンピューティングの研究は,分子反応によっ
            | 新学術領域「分子ロボティクス」 領域代表
 東京大学大学院 情報理工学系研究科
 教授 萩谷 昌己
 
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 |  て情報処理を実現しようとする当初の目標を遥かに越えて,分子システムのボトムアップな構築過
 程をプログラムするための方法論として発展して来ました.DNA分子の自己集合や折り畳みにより
 ノスケールの分解能で二次元・三次元の構造体を作り上げる方法論は既にDNAナノテクノジーとし
 て確立し,さらにナノ構造にダイナミズムを与える数々の技術が開発されています.これらの技術
 を統合し,分子レベルで自律的なロボットを構築しようとする研究は,学術の発展の中で極めて自
 然なステップと捉えられます.この研究の中核となるボトムアップ手法による人工物構築法はもの
 づくり全体を大きく転換させる,想像もできないほどのインパクトをもたらすと予想されます.
 
 本学術領域「分子ロボティクス」は,そのようなものづくりにおける大パラダイムシフトを先導する
 ことを目指して立ち上がりました.DNAコンピュータに端を発した研究コミュニティは,特に日本にお
 いては,情報工学・システム工学・機械工学・分子生物学・生物物理学・化学などの研究者が加わ
 りながら着実に発展して来ています.分子ロボティクス研究会は計測自動制御学会システム・情報
 部門の調査研究会として2010年3月に発足し,これまでに数多くの分野の研究者,とりわけ若手の
 研究者を中心に活発な研究活動を進めて来ました.
 
 本学術領域はそのような異分野間での熱い議論の中から生まれたものです.特に,各種の分子
 デバイスの可能性を探求する化学者の活躍が顕著であり,本学術領域でも,従来のDNAナノテク
 ノロジーを超えて,分子ロボット構築に必要な分子スイッチや情報伝達分子などの,さまざまな種類
 の分子デバイスを統合することを目指しています.そして,そのような各種の分子デバイス部品をボ
 トムアップ手法を用いて統合し,分子ロボットをシステムと
して構築し稼働させるための方法論を,
 システム工学・情報工学の研究者が形作って行きます.すなわち,分子レベルでの設計原理に基
 づいて自己集合した分子システムにより望みの動的挙動を実現する学問としての「分子ロボティク
 ス(分子ロボット工学)」を創成することが,本学術領域の目標であります.特に,既存の学問分野
 に囚われない若い世代の研究者が主役となって活躍されることを熱望しております.
 
 
 
 
 
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