分子ロボティクス研究会(7月26日)のプログラム

1:00-1:30 小林聡(電通大)
講演題目:「DNA論理回路の現状と課題」
講演概要: 核酸配列を用いて情報処理を行うためのさまざまな
アイデアがこれまで提案されている.本講演では,これまでの
DNA論理回路に関する研究とそこで用いられている技術の現状
を概観し,分子ロボットで回路を組み込んで利用するために障害
となっている問題点を明らかにする.

1:30-2:10 横森貴(早大)
講演題目: 「化学反応系の計算モデル : 反応オートマトンについて」
講演概要:化学反応系のモデリングを目的とした形式的体系として
反応システム(Reaction System)が知られている.これは生体細胞内
の化学反応系による様々な現象やその機能的性質を研究するための
興味深い形式的枠組みである.我々は反応システムを基盤として,
化学反応系による計算能力を探究するための計算モデルとして
“反応オートマトン”(Reaction Automaton)を提案した.本発表では,
反応オートマトンの計算領域に関する複雑性を導入して得られる幾つかの
領域計算量のクラスを考察し,それらの計算能力を解析することにより,
有限オートマトンからチューリング機械に至る既知の計算モデルの能力
との関係を明らかにする.また幾つかの興味深い関連する話題について
ふれる.

2:10-2:50 山内由紀子(九大)
講演題目:「自律分散ロボット群によるパターン形成」
講演概要:自律的な粒子群から成るシステムの自己組織化は,生物群の
群行動など自然界において多く見られるとともに,ロボット群の制御理論
など工学分野においても重要な問題である.本講演では,自律移動ロボット群
の分散制御理論について紹介する.個々のロボットは,匿名,無記憶,非同期
であり,共通の座標系を持たず,自身の座標系で他のロボットの位置を観測し,
移動先を計算する.このように非常に弱い能力しか持たないロボット群の自己
組織化能力を解明するために,ロボット群が形成可能なパターン,またバターン
形成アルゴリズムの研究が行われている.本講演ではロボット群の非同期性,
無記憶性,視界がパターン形成能力にどのような違いをもたらすのかについて
紹介する.

2:50-3:10 休憩

3:10-3:50 井村順一(東工大)
講演題目:「大規模複雑ネットワーク系の制御」
講演概要:本講演では,可制御性,ロバスト性,可同定性の視点から,大規模
複雑ネットワーク系のモデリングと制御に関する最近の研究トピック
をいくつか紹介し,分子ロボティクスの制御工学的アプローチを探る.

3:50-4:30 望月祐志(立教大学)
  講演題目:「フラグメント分子軌道(FMO)計算の現状と今後」
   講演概要:フラグメント分子軌道(FMO)法では、並列処理を駆使して実用時間で
    蛋白質や水和凝集系を全量子論的に計算することが可能です。FMO計算では
    フラグメント間相互作用エネルギーが直截に得られるために、特に創薬分野で
    ファーマコフォアでのリガンドと周辺アミノ酸残基との結合安定化の描像を得る
    のに重用されてきました。また、DNA内の塩基対やスタック状態の安定化を
    定量的に評価するのにも好適です。
    今回のトークでは、FMO計算プログラムとして独自開発しているABINIT-MP(X)
    の機能を紹介し、先導的かつ実証的な応用事例をお示しします。さらに、京など
    のHPCI資源の有効活用、ナノバイオの境界問題への取り組みなど、今後の
    展開についても触れさせていただきます。

4:30-5:00 小長谷明彦(東工大) 
講演題目:「分子ロボティクスの理論・システム研究への期待」
   講演概要:分子ロボティクスは生化学とロボティクスを背景とした境界領域研究
    であり、その理論・システム研究は未だ黎明期にある。本講演では、新学術領域
    「分子ロボティクス」を推進する立場から、分子ロボティクスの理論・システム
    研究に期待すること、ならびに、議論のたたき台としてのグランドチャレンジ
    素案について述べる。