Home

第1回分子サイバネティクス・分子ロボティクス定例研究会の開催

印刷

2021年3月の第1回分子サイバネティクス・分子ロボティクス定例研究会を下記の通り開催いたします。

主催:科研費学術変革領域(A)「分子サイバネティクス」
後援:計測自動制御学会システム情報部門「知能分子ロボティクス調査研究会」
日時:3月17日(水曜日 13:00~16:30頃予定)
場所:ZoomのURLを追って連絡いたします.
参加費:無料

今回のオンライン定例会では,東京大学 水内良 先生に「原始生命を模した分子複製システムの構築と進化」と題した講演を,京都大学 本田直樹 先生に「生命システムのデータ駆動モデリング」と題した講演を行っていただく予定です.


上記講演に加えて,若手研究者の方や学生の方からの口頭発表を2件程度募集しております.
希望者は以下の送信フォームを利用して申し込んでください.
学生の方は指導教員の先生に相談してから申し込むようお願いします.

発表申し込みは3月3日(水)までに登録をお願いいたします.
聴講のみの参加は3月10日(水)までに登録をお願いいたします

参加登録フォーム https://forms.gle/kBudASqJLQLD4Hbs7

みなさまのご参加をお待ちしております.

世話人
慶応義塾大学 小塚太資 tkotsuka [at] keio.jp
東北大学 岩渕祥璽 hoji.iwabuchi.p5 [at] dc.tohoku.ac.jp

----------研究会プログラム(暫定)----------
第1回分子サイバネティクス・分子ロボティクス定例研究会
主催:科研費学術変革領域(A)「分子サイバネティクス」
後援:計測自動制御学会システム情報部門「知能分子ロボティクス調査研究会」
13:00 - 13:20 受付
13:20 - 13:25 世話人挨拶
招待講演
13:25 - 13:30 水内先生の紹介
13:30 - 14:20 招待講演
講師 水内 良 先生(東京大学)
「原始生命を模した分子複製システムの構築と進化」
14:20 - 14:30 質疑応答
14:30 - 14:35 本田先生の紹介
14:35 - 15:25 招待講演
講師 本田 直樹 先生 (京都大学)
「生命システムのデータ駆動モデリング」
15:25 - 15:35 質疑応答
15:35 - 15:45 休憩
一般公演
15:45 - 16:05 講演者1
16:05 - 16:25 講演者2
16:25 - 16:45 引継ぎ等
---------------------------------------------------
水内良 先生 (東京大学)
「原始生命を模した分子複製システムの構築と進化」
発表要旨:
 原始生命はRNAなどの単純な情報分子の自己複製体として誕生し、進化によって徐々に複雑化してきたと考えられている。この過程を理解するための一つの方法は、原始複製体を模した実験モデルを構築し、実際に進化させてみることである。そこで我々は、RNA、タンパク質、微小区画等を組み合わせて単純なRNA複製システムを独自開発し、実験的に進化させることで、有り得た原始生命進化の道筋を調べている。本発表では、これまでのRNA複製システムに関する研究を中心に、分子複製システムの構築方法や可能な進化について紹介したい。
 発表の前半ではまず、進化する分子複製システムの概要を説明し、実際に我々のRNA複製システムでどのような進化が起きたかについて、最新の研究を紹介したい。例えば近年、RNA複製システムを長期的に複製して進化させたところ、元々クローン集団であったRNAは多様な変異を蓄積して、徐々に異なる性質をもつ5種類の群へと分岐した。またこれらの分岐群は様々な相互作用により複雑な複製ネットワークを形成した (未発表)。一方で、人為的に複雑化させたRNA複製システムの進化についても調べており、2種類のRNAが協力して複製するシステムの例では、特定の条件下では進化によってその協力性が強化された [1]。以上の結果は、単純な分子複製体であっても進化による漸進的な複雑化や、複雑性の強化が可能であることを示している。
 また発表の後半では、分子複製システムの改良に向けて、その構築に関する研究も紹介したい。例えば近年、RNA複製システムに適したRNAの特徴を調べ、単純な機構で効率よくRNAが複製するためには特定の配列構造が重要であるという知見を得た [2]。また、RNAやタンパク質を封入する区画構造として、一般的に用いられる脂質二重膜や油中水滴ではなく、液液相分離で形成される膜が無いドロップレットが利用できることを示した [3]。これらの知見は、より原始生命らしい人工分子複製システムを構築し、利用するために重要であると考えられる。
[1] Mizuuchi, R.; Ichihashi, N. Sustainable replication and coevolution of cooperative RNAs in an artificial cell-like system. Nat. Ecol. Evol. 2018, 2, 1654–1660.
[2] Mizuuchi, R.; Usui, K.; Ichihashi, N. Structural transition of replicable RNAs during in vitro evolution with Qβ replicase. RNA 2020, 26, 83–89.
[3] Mizuuchi, R.; Ichihashi, N. Translation-coupled RNA replication and parasitic replicators in membrane-free compartments. Chem. Commun. 2020, 56, 13453–13456.
本田 直樹 先生 (京都大学)
「生命システムのデータ駆動モデリング」
発表要旨:
 ライブイメージングや次世代シーケンサを代表とする計測技術の進展により、生体内における分子活性や遺伝子発現量がハイスループットに計測され、大量かつ高次元のデータを手にできる時代となった。その結果、これまでの想像を超えて動的かつ複雑な生命現象を目の当たりにすることとなり、それらの裏に潜む規則性をヒトが認識することが困難となっている。したがって、データから生命システムのメカニズムを抽出する逆問題的アプローチは益々重要になると考えられる。そこで本講演では、生命システムを司る法則をデータ駆動的に解読するための、機械学習および数理モデリングを融合したアプローチについて議論する。具体的には、細胞・多細胞・個体の階層において、生体が行う情報処理や最適制御をメカニスティックに理解できることを紹介する。
 

第3回オンライン定例研究会のお知らせ【締切延長】

印刷

第3回オンライン定例研究会を下記の通り開催いたします。

主催:計測自動制御学会システム情報部門「知能分子ロボティクス調査研究会」
日時:12月9日(水曜日 13:00~16:00頃予定)
場所:ZoomのURLを追って連絡いたします。
参加費:無料
世話人
東北大学 劉詩韻 hikari[at]molbot.mech.tohoku.ac.jp
慶応義塾大学 小塚太資 tkotsuka[at]keio.jp

今回のオンライン定例会では,九州大学 花井泰三 先生に「人工遺伝子回路を用いた大腸菌による物質生産の向上」と題した講演を行っていただく予定です.
上記講演に加えて,若手研究者の方や学生の方からの口頭発表(日本語)を3件程度募集しております.
希望者は以下の送信フォームを利用して申し込んでください.
学生の方は指導教員の先生に相談してから申し込むようお願いします.

参加登録フォーム https://forms.gle/ufSAy3UNCehHteZc8
発表申し込みは11月25日 (水) 12月2日(水)までに,聴講のみの参加は12月2日 (水)までに登録をお願いいたします.

みなさまのご参加をお待ちしております.

----------研究会プログラム(暫定)----------
SICE分子ロボティクス研究会第3回オンライン定例研究会
主催:計測自動制御学会システム情報部門「知能分子ロボティクス調査研究会」
13:00 - 13:20 受付
13:20 - 13:25 世話人挨拶
13:25 - 13:30 花井先生の紹介
13:30 - 14:20 招待講演
講師 花井 泰三 先生(九州大学)
「人工遺伝子回路を用いた大腸菌による物質生産の向上」
14:20 - 14:30 質疑応答
14:30 - 14:40 休憩
一般講演

14:40 - 15:00 小塚太資(慶応義塾大学)
題目:空間周波数分析に基づく細胞間分子通信システムの外乱応答解析
15:00 - 15:20 Marcos Masukawa(東京工業大学)
題目:DNA structures inside aqueous-aqueous emulsions - assembly, purification and folding
15:20 - 15:40 引継ぎ等
---------------------------------------------------

招待講演要旨

人工遺伝子回路を用いた大腸菌による物質生産の向上

花井泰三(九州大学 農学研究院)

1.はじめに

機能既知の生体分子パーツを組み合わせて設計・再構成された遺伝子発現制御システムは、「人工遺伝子回路」と呼ばれる。人工遺伝子回路は、作製者の意図に従った特定の目的を実行させることが可能であることから、物質生産を目的とした代謝制御などのさまざまなエンジニアンリング分野への応用が期待される。人工遺伝子回路と複数の酵素遺伝子を組み合わせて構成された人工的な代謝経路(合成代謝経路)の研究をあつかうのは、合成生物学と呼ばれる研究分野である。本発表では、これまでの研究を中心に、合成生物学の工学的な応用研究について解説を行いたい。

2.代謝トグルスイッチによるイソプロパノール生産向上

一般的な代謝工学の分野では、物質生産と競合する経路に関する遺伝子をゲノム上から破壊(ノックアウト)することで、目的物質の生産性の向上を図る。しかし、目的物質のトータル生産量は一細胞あたりの生産量×細胞数であるため、従来の遺伝子ノックアウトに基づく代謝工学では、その破壊が著しい菌体増殖の低下を招く遺伝子は改変対象から排除するしかない。このため、物質生産と菌体増殖のどちらにも重要な酵素遺伝子が持つトレードオフ関係を解消することできない。我々は、人工遺伝子回路(代謝トグルスイッチ)を用いた遺伝子発現制御を行い、「菌体増殖に適した代謝状態(細胞増殖モード)」と「物質生産に適した代謝状態(物質生産モード)」を人為的に切り替えること(代謝流束制御)でこの問題を解決することを試みた1)。代謝トグルスイッチの実際の利用には、我々が過去、合成代謝経路を大腸菌に導入することにより生産に成功しているイソプロパノールの生産2)を対象とした。

3.菌体濃度センサーによる自律的代謝流束制御

代謝トグルスイッチを用いた代謝流束制御では、その効果を最大限に引き出すために、代謝流束制御のタイミングが非常に重要となる。そのために、上記のイソプロパノール生産実験では、菌体密度を指標として代謝流束制御のために利用したIPTG添加のタイミングを最適化した。しかし、実際の生産過程においてこの方法を行うためには、菌体密度を断続的にモニタリングし、誘導剤を添加しなければならない。この様な人為的な誘導操作をなくし、大腸菌による自律的な代謝流束制御を実現するために、我々は大腸菌においてクオラムセンシング機構の再構築と改良に取り組んだ3)。

4.異なる人工遺伝子回路を有する二種類の大腸菌による協調的な物質生産

バイオマスを利用して、合成代謝経路を導入した大腸菌を用いた物質生産が注目されているが、大腸菌がバイオマスを利用するためには、バイオマスからグルコースなどへの糖化プロセスが必要となる。この糖化プロセスは、糖化酵素の生産や生成が必要であるため、非常にコストがかり、バイオマスからの物質生産の社会実装に大きな問題となっている。そこで、設定した菌体密度に到達すると溶菌し、糖化酵素を放出する人工遺伝子回路を導入した大腸菌(糖化・溶菌株)と、グルコースからイソプロパノール生産を行う合成代謝経路を組み込んだ大腸菌(生産株)を、共培養することによってセロビオース(グルコースに分子からなるモデルバイオマス)からイソプロパノールの直接生産を試みた4)。

5.最後に

活性の高い酵素の獲得には、ランダム変異を導入する方法が用いられるが、そのスクリーニングには、細胞の破壊、活性の測定など、多くの手間がかかり、多くのサンプルを処理することは難しい。そこで、人工遺伝子回路を構築し、蛍光により酵素活性を評価できるハイスループットな酵素活性測定システムを構築する研究も最近行っている。

6.文献

1. Yuki Soma, Keigo Tsuruno, Atsushi Yokota, Taizo Hanai: Metabolic flux redirection from a central metabolic pathway toward a synthetic pathway using a metabolic toggle switch, Metabolic Engineering, 23, 175 (2014).

2. Taizo Hanai, Shota Atsumi, James C. Liao: Engineered synthetic pathway for isopropanol production in Escherichia coli, Applied and Environmental Microbiology, 73, 7814 (2007).

3. Yuki Soma, Taizo Hanai: Self-induced metabolic state switching by a tunable cell density sensor for microbial isopropanol production., Metabolic Engineering, 30, 7 (2015).

4. Hiroshi Honjo, Kenshiro Iwasaki, Yuki Soma, Keigo Tsuruno, Hiroyuki Hamada, Taizo Hanai: Synthetic microbial consortium with specific roles designated by genetic circuits for cooperative chemical production., Metabolic Engineering, 55, 268 (2019).

 


1 / 10 ページ

 

このページは
分子ロボティクス研究会
の公式ウェブサイトです.

SICE(計測自動制御学会)
の調査研究会として活動しています.